経済のグローバル化が進展する中、日本企業も積極的に海外に進出し、日本以外での企業活動の占める比重がますます大きくなっている。それに対して、中国では「優秀な人材を確保できない」といった声も多く聞かれ、人材の獲得が、企業が成長をする上での一つの課題となってきている。また、採用後においても、せっかく採用した人材が短期間で辞めてしまうといったケースも多くみられ、人材確保の問題も企業を悩ませている。
世界経済が混迷する中、中国経済は発展の傾向を維持しており、現在のGDPは日本を上回り、世界第二位の経済大国に躍り出ている。世界経済をリードする役割という期待も大きい。しかし、中国は先端人材の流出数においても世界一と言われる。人材の海外流出の理由にはさまざまな問題がある。
本稿ではこのような問題意識に基づき、中国の人材の海外流出を絞り、それに隠れている原因とその活用の方策を検討することを目的とする。まずは中国企業が直面している困難を明らかにし、中国企業からほかの形態の企業への人材流出も、各種のアンケート調査の結果を通して、明らかになる。その後日本企業の現在の取組み事例と欧米企業の成功例を紹介する。また、優秀な人材を採用するための努力は大切であるが、人材流出の防止に取り組むことも重要である。そこで優秀な人材を維持するための施策が必要となる。そのため、中国企業の人材を確保する戦略を検討するのに前提となる中国人の仕事観について分析を試みる。おもに、個人主義、キャリア志向、管理の三つの面から述べようと思う。その上で、今後の対応策として、中国人の特徴を前提とし、併せて中国的経営の“強み”を活かしながら、企業と個人の価値を共に向上させる人材戦略のあり方を探ろうとするものである。
中国経済は改革開放の発展を経て、著しく成長している。我々の企業がわが国の経済社会発展の中で重要な地位にあり、人材流出を止まるのは国民経済の発展の重要な構成部分となっている。