中日色彩と色彩文化の対比
要旨:文化は人類社会が生存することと発展することの基礎であり、言語は文化を構成する重要な要素である。世界は多彩で、色彩語はどの国あるいは民族にとって、重要な意味がある。色彩語は、いうまでもなく、色彩を表すための語であるが、違った色彩は人に与える感覚も違って、色彩によって違ったイメージが喚起られる。
色彩語は独特な言語と文化の意味を持っていて、ある民族の特有な色彩意識と文化を反映することができる。中国は五千年の歴史の中で、中国文化の特徴がある色彩意識を形成した。日本は一衣帯水の隣国として、その文化の形成と発展が中国の文化の影響を受けた。色彩の文化に関しては、中日両国は色彩の使用方法や色彩文化が一致することもあるが、自民族の自然環境、生活環境、生活習慣、審美観念の違いによって独特の色彩文化を形成した。
色彩語は言語の表現を豊かにさせることだけでなく、言語表現に文化的意味を付与させたりすることもある。日本には昔から「青、赤、白、黒」によって「春、夏、秋、冬」四季を指す習慣があって、しかも「赤、白、青」の三色を色彩の基礎にしている。そのため、本論文は「赤、白、黒、青」の四種類の色を例にして、中日両国の色彩が含んでいる文化に対して研究したい。
キーワード:色彩;文化;赤;青;黒;白
摘要:文化是人类社会赖以生存和发展的基础,语言又是构成文化大系统的要素之一。世界是多彩的,色彩语言对所有的国家或民族来说,都具有重要的意义。色彩名能让人们引发联想,唤起人们对其色彩的印象。
色彩语言有着独特的语言和文化含义,能够反映该民族特有的色彩意识及其文化传统。中国在五千年的历史当中,形成了具有中国文化特色的色彩意识。而日本为其一衣带水的邻邦,其文化的形成及发展都受到了中国文化的影响,但是由于本民族自身的地理环境、生活习惯、审美观念的差异,又形成了各种独特的色彩文化。
色彩词不仅使语言的表现变得丰富,也赋予其文化意义。日本自古以来就有以“青、红、白、黑”来代指“春、夏、秋、冬”的习惯,并且把“红、白、青”作为色彩的基础。本文以“红、白、黑、青”四种颜色为例,对中日两国色彩中的文化含意展开研究。
关键词:色彩;文化;红;青;黑;白
はじめに
色彩というものは人間生活を取り巻く自然環境からの贈り物である。もし人間界に色彩というものがなかったら、人間生活はどんなに無味乾燥のものであろう。色彩があるからこそ、人々は世界の美しさを感じ取り、生活の豊かさを味わうことができる。中日両国の色彩語が豊かである。色彩語が多いということは両国が色彩に敏感な民族であることを表しているといえよう。中国人は赤色が好きなのに対し、日本人はそんなに好きではないような気がする。また、日本語の中で、女性のつやつやとした美しい髪は「緑の黒髪」で表される。このように、色彩語を用いることによって、表現が生き生きとしてくる。色彩語の特殊用法は民族の色彩感覚や認識を反映すると同時に、その社会文化及び民族心理の特質の一側面を反映している。
色彩語はある民族の言語には欠かすことのできない、しかも言語の中に大切な役割を果たしていることが広く認められている。今までの色彩語に関する研究を見れば、色彩語の語源、歴史、あるいは中日両国の色彩語の比喩的表現の対照研究などについての論述が多く、両国色彩語の特徴、色彩文化の対照研究及び色彩文化の差の原因から論じるものが少ないようである。したがって、本論は従来の研究を踏まえながら、中日基本色彩語を研究対象とし、特に中日両国の色彩文化の異同点及びその違いの原因について分析してみたい。
1.中日両国語における基本色彩語
1.1中国語における基本色彩語
中国大陸は土地が広く資源が豊かで歴史も極めて長く、変化に富んだ豊かな文化が生み出されてきた。五行思想は中国における古代の人々の世界観であり、人間が生きていく中で、天地に対する畏敬、尊敬がこめられて、自然崇拝から生まれた説である。紀元前六世紀頃の春秋時代から、紀元前三世紀頃の戦国時代にかけて形成された古代思想である。
木、火、土、金、水は世界を構成する基本的な五元素とし、人間が自然界で生活していく上で、最も大切なものとする。五行思想は木は火を生み、火は燃えて土に還る。土の中にはさまざまな金属が含まれ、水が生じて、その水が木を育てるという五行循環の思想である。それを基本によって、方向、色彩、四季感など考えられてきたのである。
色彩を見れば、木は青であり、火は赤であり、土は黄色であるが、これは色の三原色であり、この三色に加えて必要なのは白と黒である。したがって、古代中国人の色彩感覚を考察すると、もっとも基本色として、青、赤、黄、白、黒の五色であることが分かる。
大岡信の説により、日本語の最初の色彩語は赤、白、黒、青の四色である。「あか」は夜が明けて明るくなるという意味から色の赤に転用されたもので、「明」の概念を示し、「明るい」を意味している。「しろ」は「著し」と同じ語源であり、はっきりした様子を表わす「シル(顕)し」が、色の白に転用されたもので、「顕」の概念を表し、はっきりしているという意味で使われている。「くろ」は「明るし」に対し、日が暮れて暗くなるという意味から色の黒に転用されたもので、「暗」の概念を表し、「暗し」と語源は同じである。「あお」の由来はまだはっきりしていないが、日本の古代色彩語では茫漠としたものを「あおし」で表していた。したがって、「あお」は「漠」の概念を示すものと見てよかろう。つまりこの四色はそれぞれ明、顕、暗、漠の原義と対応していると言われており、光の明暗を表現しているのである。古代日本人の色彩感覚はもとはそのとおりです。柴田武の説によると、赤、白、黒、青の四色は日本語「基本色彩語」とも言われる。
2. 中日色彩文化の対比
言葉というのは、社会生活の反映するものである。それは人間生活を取り込む社会環境から、人々の心に自然に生起する共通の感情に基づいている。色彩が人間の心理感覚に与える影響も無視することができず、人の色彩観は一定の時代あるいは地域的、社会的観念や人々の美的意識を反映するものである。したがって、色彩語は各民族の思考習慣、文化背景と深く係わっている。それから、中日両国における色彩文化について論じたい。
2.1「赤」に対する日中両国の色彩文化
人類が一番最初に色を意識したのは太陽の「赤」の色であろ。また、人類は火を使って、食物を煮たり焼いたり、夜の暗闇を克服したり、「赤」は生命の源である。古代人が血の色を神聖と見なすのは、狩猟や戦闘で血液の流失が動物や人の生命を奪うことの体験によるものである。「赤」に対する畏敬の念が生まれた。「赤」は生命の色であり、生命の源を象徴する色であるから、情熱や生命力を表す色ともなっている。「赤」はその生命の展開として活動、健康、情熱の象徴となり、また、ややその過剰な表現として、興奮、不満、怒り、激情、狂気の象徴ともなる。
2.1.1中国語における「赤」の文化意味
中国を代表する色は何と言っても「赤」であろう。中国人は昔から「赤」に対して崇拝に近い感情を持っている。色彩語の中で“中国红”という言葉がある。古代中国においては、赤の鮮やかさは常に権利と家柄の象徴にもなっているため、お金持ちの家屋の窓や入り口を赤く塗るのはごく普通の習慣である。また、昔の宮廷、寺院を見ても赤色が多い。中国人にとって、赤は吉事に結びつく好ましい色である。おめでたい飾りつけには赤い色で賑やかに彩る習慣が今でも存在する。
言語は時代の変わりによっていくつかの変化も生じた。色彩言語においてもこの点をしめしている。以下の例を通して、「赤」が含む文化意味を探求する。
① 共産主義、革命、進歩の象徴。例えば、红军、又红又专など。
② 運がよい、盛ん、賑やか、順調の象徴。例えば、红火など。
③ もてはやされて、受けている、成功、人気があること。例えば、红极一时、走红、唱红、红了などがよく使われる。
④ 収益、ボーナスなどのお金を指すこと。例えば、红利、分红、红包など。
⑤ 婚姻に関係すること。例えば、日常生活で男女の間に架け橋をかけることを「牵红线」という。红媒、红娘などもある
⑥ 女性の立派な服装、美人を指すこと。昔、女性が化粧する時、よく赤色を使っていたことから、“红”は女性を代表するようになった。例えば、红装、红妆、红颜、红泪など
⑦ 忠誠心があるかつ正直な人をさす、善人のたとえ。例えば、唱红脸など。中国の劇曲の中で各種の隈取がある。その中で“红脸”の赤色は忠勇を象徴しているから、『三国志』の関羽のような人はよ“红脸”の隈取を被る。また日常生活の中でその言い方もよく使われる。
⑧ 恥ずかしがったり、怒ったりすること。例えば、红潮、红过脸など。
⑨ 嫉妬、羨望のこと。例えば、红眼病は、羨望、嫉妬心理で精神の不安定という意味を持っていることである。
⑩ 停止や危険を意味すること。例えば、闯红灯、红灯など。
2.1.2日本語における「赤」の文化意味
赤は太陽、火、血の色によく似ていて、鮮やかで暖色系に属するものである。語源から言えば、「暗」に対し、「明」の意を表す。
中国と同じように、古代日本人は赤が神秘、吉祥のものと思われた。原始社会の人々にとって、太陽や火などは重要な存在であった。赤は太陽や火の色に似ているから、赤に対して、古代日本人は一種の霊的なものを感じ、吉祥のものの象徴として用いていた。
しかし、時代の移りかわりにしたがって、赤の意味がさまざまになり、以下の例を通して、日本がにおいて、「赤」の伝統的な文化意味のほかにどんな意味をもっているか
① 共産主義者、共産主義思想の意味。彼は赤だ。((《新日汉词典》)
② 中身がむき出した状態。例えば、赤肌など。中国語には、“红”はそういう意味がなさそうであるが、「赤」という漢字が同じ意味を持っている。たとえば、「赤脚」、「赤膊」はその意味である。
③ 俗悪、低級の意味。例えば、赤新聞など
④ 落第の意味。赤点を取る。(『広辞苑』 第五版)
⑤ まったく、徹底(的な)という意味。それに私はあなたにとってはまるで赤の他人なのだ。(太宰治 『トカトントン』)より。他に「赤素人」(ある物事にまったく経験のない人のことを指す)、「赤嘘」(疑う余地のない嘘)、「赤貧」(極めて貧しい)などもその例である。これらの例を見て、「赤」は接頭語として、強調の役割を果している。
⑥ 恥ずかしがったり、怒ったりすること。日本語には「顔が赤くなる」、「赤めを引く」などの表現も、恥ずかしがったり、怒ったりという好ましいからぬ状態を表す。
⑦ 欠損の意を表すこと。家計は今月も赤字だ。(『類語例解辞典』)
2.1.3両者の異同点の対照
まず、両言語とも同じ意味を持つ項目について述べたい。“共産主義、共産主義者、革命的”の意味は、両言語においていずれも存在するが、そのイメージが違うようである。中国語の場合、いずれもプラス的イメージであるが、日本語の場合、どうもマイナス的イメージを帯びているようである。
そして、生理学という視点から言えば、赤は見る人を強く刺激し、真っ先人の目に付く色の一つとして、交差点などのような注意すべき所は、よく「赤」という警備の色を使う。この点は世界中共通である。また、人間は恥ずかしがったり、怒ったりするとき、顔は赤色になるのが普通である。
両言語の違うところも著しい。ざっと見れば、一番大きな違いのは、中国語の“红”はほとんどプラス的イメージを持つことに対して、日本語の「赤」はマイナス的イメージを持つものが大部分を占めていることである。
中国人は昔から「赤」は生命の象徴と見なし、凶を吉に化する力もあると信じているという説もある。そのため、人間は赤に対し崇拝に近い。したがって、古代において、人間生活を主宰する神様への奉納物は一般的に赤いものが多い。それによって、平安無事、豊作などを祈る。また、赤を吉祥、賑やかな象徴とも見なす。そうすると、婚礼を行う場合、赤色はよく使われる。また、オリンピックなどの世界コンテストに出る中国チームは赤いユニフォームを着るのが普通である。
要するに、赤が進歩、希望、情熱、力などの象徴意味は中国人に深く影響してきた。中国人は赤が大好きである。その好みは現代に伝わってきた。“中国红”という言葉はそのいい例であろう。中国人は赤についての原始的な発想は、子々孫々代々承継してくる。そのため、濃厚なプラス的イメージに色付けられたのである。古代日本人も「赤」を神聖、吉祥の色と見なしたが、時代の流れにつれて、そのイメージはマイナス的イメージに変わったのである。なぜかというと、日本人は含蓄、自己誇示が下手で、言いふらしないであるかもしれないから、豪放で情熱に溢れる「赤」があまり好きではない。つまり控えめの日本人は高い調子を持つ「赤」に対して気に入らないのである。
2.2「白」に対する日中両国の色彩文化
「白」は太陽の光線を全部反射した時に感じられる色で、雪の色に似ているものである。「白」は「彩度」が最低で、「無彩色」と言われるが、「明度」が最高で、明らかな感じが強い。「白」は清潔で汚れのない色であるが、最も汚れやすい色でもある。「白」は明度が明らかで、清潔といういい意味を持つようになる。
2.2.1中国語における「白」の文化意味
「白」という字は考証によると、その字形は“日”に由来する。日光は白色だからである。「白」が古くから高潔、純潔、光明などを象徴する色として使われてきた。現代使われている“白衣天使”、“白衣战士”はその象徴意味で看護婦さんのことを指す。ところが、中国の陰陽五行思想によると、「白」は五色の一つで、五行では金、季節では秋に対応する。秋は収穫の季節であるが、一方、万物は枯れていき、死んでいく季節でもある。中国古代では犯人を殺すのは秋に行うことが多い。秋を代表する白色は不吉な色と見なされている。次は「白」の文化意味をそれぞれ紹介しよう。
① 明らか、無罪の意味。例えば、清白、不白之冤など。
② 何も加えていない状態。例えば、白卷、一穷二白、白手起家など。
③ 葬式に関係すること。例えば、白事など。
④ 冷たい態度を表すこと。例えば、白眼、白眼儿狼など。
⑤ 無駄に、成果、効果がないこと。例えば、白费、白搭、白劳など
⑥ 降伏や戦意のなさを表すこと。例えば、白旗など。
2.2.2日本語における「白」の文化意味
日本人は古くから「白」を親愛する。「白」は「汚れがない」、「清浄である」というようなことを内容とすると考えられ、純潔、純粋、清浄、素朴、潔白、神聖などを象徴する。日本では「白」の「明白」という感じから、、「清浄」な色として尊ばれてきた歴史がある。また、神聖な色として、信仰の色によく用いられてきたが、神事の色として上代より尊ばれ用いられてきている。「白」は日本民族の精神構造にあった、象徴に満ちた色ということができよう。次は日本語の「白」の文化意味を紹介しよう。
① 明らか、無罪の意味。例:私は白だ。
② <, /SPAN>何も加えていない状態。例:答案を白のままで出す。
③ 成功、勝利の意味を表すこと。例:試合三番目でようやく白星をあげた。
また、国会で、記名投票による表決時、賛成の意を表示するのみ用いる票は白色であるから、「白票」は賛成の意味を表す。
④ 冷たい態度を表すこと。例:白目で見る。
⑤ 酌婦、娼妓を指すこと。例:白首。娼妓が襟白粉を濃く塗りたて客に媚を売るから、日本語には娼妓を「白首」という。また、明治の初め、売笑婦を「白鬼」と呼ばれる。
⑥ 降伏や戦意のなさを表すこと。例:白旗を揚げて降伏する。
2.2.3両者の異同点の対照
以上の例のように、両言語とも「白」は「雪のような色」という本義で、清潔を感じさせるから、潔白、無罪という意味が生まれた。「何も加えない明るさ」という意味を表すところから、「何もない」、「何も加えない状態」という意味が出た。「白眼」、「白目」ということばの意味も同じである。白い旗は降伏の意を表すのは世界のどこでも同じであろう。
中国語の「白」も日本語の「白」も、プラス的意味とマイナス的意味を持っている、これは人間の精神観念と文化価値感の両面性を反映すると同時に、色彩自身の二重性を反映する。中国語の「白」は日本語の「潔白」、「淡白」などのように積極的に評価されることはむしろ少ない。日本語では白色は冷たいイメージがあるが、美しさ、純潔などを象徴している「白」に対する好みは古くから強く、その清潔で明るいイメージは広く好まれている。
全体から見ると、「白」は両義的なイメージに注目されるが、特にプラス的意味については日本語の独自性があると思われるが、中国語の「白」はマイナス的意味が多い。両国の固有文化や民族心理が違うから、色彩語に対する認識も違う。中国語の「白」は「不幸」の象徴で、「白事」は「葬式」のことを指す。日本人は「白」を神聖な色と見なし、「白」に関する表現がプラス的意味が多い。「成功、勝利」を表す「白星」、「主家に忠実な番頭や雇い人」を表すこともある。
2.3「黒」に対する日中両国の色彩文化
「黒」は「明」と反し、墨、木炭のような色で、暗くて濃い色で、すべての色の中で最も暗い色であり、すべてのものを隠してしまう闇の色でもある。「黒」は暗闇を象徴色である。人間は黒の闇を恐れるとともに、また、危険な時にはかえってその闇の中に身を隠そうとする。また、その黒の闇に身を隠す人の心は、恐怖、不安に戦き、あるいは緊張にさらされているのである。
2.3.1中国語における「黒」の文化意味
中国語の“黑”は五行の「水」と対応し、四季と関連して「冬」と対応するのである。“黑”という字はもともと、物を火で燻した時の色に由来する。その色は夜の色と似ているから、沈静、神秘などを象徴するようになった。黒色は暗い色、白色は明るい色であり、黒白は相対応しているので、いろいろなマイナス的意味を生み出す。以下の例を通して中国において「黒」の文化意味を説明する。
① 剛毅、正直を象徴すること。例:黑脸包公など。
② 物の真相、秘密を表すこと。例:黑白混淆、黑幕重重など
③ 邪悪、残忍を表すこと。例:起了黑心、黑点子、黑社会など
④ 不正、非合法なことを指すこと。例:黑户、黑市交易、黑色收入など。
⑤ (政治や社会状況)腐敗、暗さ、憂鬱なイメージの意味。例:打黑など。
2.3.2日本語における「黒」の文化意味
日本の「黒」は「暗い」、「暮れる」などの光に対する感覚を表す語と同源であるという説が一般的に認められている。発音からいえば、「くろ」は「こ」(濃)と「いろ」(色)の縮音で成り立っている。「明」と反し、「暗」の概念を表す。「黒」は中国語と同じように、暗闇の象徴色で、マイナス的イメージが強いが、プラス的イメージを持つこともある。次に、「黒」の派生義を見てみよう。以下の例を通して日本において「黒」の文化意味を説明する。
① 苦労し、経験の積みなどでいい結果になること。例:彼はこの会の大黒柱
② 物の真相、秘密を表すこと。例:白黒をつける
③ 邪悪、残忍を表すこと。例:腹黒い家臣の陰謀に陥る
④ 失敗を表すこと。例:黒星続きの捜査陣。
⑤ (政治や社会状況)腐敗、暗さ、憂鬱なイメージを意味すること。例:計画の前途に黒雲がかかっている。
2.3.3両者の異同点の対照
以上の例を対照して、両言語の「黒」の文化意味は違いが少ないことが分かった。濃厚な暗色としての「黒」は暗くてはっきりせず、重苦しい感じを持っているので、よくマイナス的イメージ意味に用いられ、その暗い感じから「秘密」、「邪悪」、「犯罪」などの意味に転じた。この点において、各言語に共通かもしれない。両言語の「黒」ともプラス的イメージを持つ。昔から、「黒」は重々しくて厳粛な色と見なしてきた。このような色彩感は今にも人々の日常生活に影響している。剛毅、正直を象徴する「黒」は京劇の隈取の中でその剛毅、正直な人によく使われる。日本語の場合、特定の言語環境において、「黒」はまた、「黒字」、「大黒柱」のようなプラス的意味で用いられることもある。また、日本人は黒色にとけない縁を持っている。日本料理の中で、黒いお皿がよく見られる。この現象は他の国にはきわめて少ない。柔道において、「黒帯」といったら、すごい人が登場することが自然に分かる。「黒」は不思議で、神秘な色である。人間に多くの悪い印象を残したが、「黒」に対する好みにあまり影響を与えないようである。組み合わせは適切であれば、黒い服がモデルの感じが生めるから、数多くの人が黒い服が好きである。
2.4「青」に対する日中両国の色彩文化
火の色である赤に対し、青は水の色である。水はもともと無色透明であるが、光が厚い水の層を通過すると、波長の長い暖色系の光は吸収されて水は青く見える。青には、興奮を抑える鎮静作用がある。血圧を下げたり脈拍を少なくして体温を下げてくれるので、穏やかな呼吸へと導いてくれる。眠れない時や疲れている時に効果を発揮するので、青い色を眺めていると、いつの間にか安らかな眠りについていくことであろう。燃え立つ感情を抑え、頭を冷やし、冷たい心で冷静に現実に対応していこうとする心理を反映する青は、まさに水の色であろう。
2.4.1中国語における「黒」の文化意味
「青」は植物の成長と旺盛な生命力に関連し、「绿」の意味を持つ。「青草」、「青松」などもその例である。古代中国語の中で“青取之于蓝,而胜于蓝”という言い方があるから、「青」は「蓝」の意味もある。「青天」、「青海」などもその例である。青色は空の色と似ていて、現代中国語の中に「蓝图」、「蓝本」のような語もある。また、「青」はまた「黑」の意味もある。たとえば、「青眼」である。
① 未熟、若さを表すこと。例:青梅竹马など。
② 顔色の悪さを表すこと。例:青面獠牙、青筋暴起など。
③ 好意、歓迎を意すこと。例:青睐など。
④ 清廉の意味。例:青天など。
⑤ 高位高官を象徴すること。例:平步青云など。
⑥ 妓女、妓楼をたとえること。例:青楼など。
現代日本語の「青」は「赤」、「白」、「黒」に比べ、その色彩の範囲が広い。 「青」は一般によく晴れた空の色や澄んだ海の色と説明されるから、「青空」、「青海原」という言葉がある。また、植物や動物と関連し、緑色を指す。たとえば、「青信号」、「青虫」、「青葉」などである。特別な場合で、「青」は黒色を指す。「青馬」、「青毛」などは馬の毛並みの光沢がある黒をいい、それが青みを帯びて見えることによる。「青眼」も黒目の意味である。
① 未熟、若さを表すこと。例:青二才のくせに生意気を言うな。
② 顔色の悪さを表すこと。例:彼は病気で青白い顔をしている
③ 好意、歓迎を意すこと。例:青眼
2.4.3両者の異同点の対照
以上の例を通して、両言語の「青」は「未熟」、「顔色の悪さ」、「好意、歓迎」という点において共通であるが、日本語の「青」の文化意味が中国より少ない。また、その用法はプラス的イメージを持つ言葉が少量で、人間について偏りが見られ、その点が特徴と言えよう。それに対し、中国語の「青」の文化意味がやや多い。その中でマイナス的意味があるが、プラス的な転義用法も少なくない。また、中国語の場合、「青」の否定的な意味はもともと肯定的な意味を持つこともある。たとえば、「青楼」は本来豪華な住宅を指していたが、だんだん「妓楼、妓女」の意味に転じた。「青天」は朗々とした乾坤を代表し、天下のすべてを明察できることから、古代中国語で清廉な官吏をたとえる。空に漂っている雲は位置が高いかもしれないから、高位高官あるいは地位の高いことのたとえになった。日本語の「青」の文化意味が少ないが、日本人にとって、「青」に対する印象が極めていい。日本人が内向で、静かで、温和な「青」が大好である。「青」は日本人にとって、「白」と同じように魅力があり、昔から、「日本の色」と見なしてくる。現代の社会はいろいろな圧力があり、人間が静かな感じをくれる「青」に対し、さらに好きになったようである。
3. 中日の色彩文化の差の原因
3.1民族文化によって生じる違い
異なる民族は文化伝統、生活風俗習慣、民族心理と民族の感情などの方面に一定の相違が存在するので、これによって色彩に対して異なった審美感覚と特殊な偏愛も形成された。中国人は昔から赤が好きである。祖先は太陽と火を崇拝するから、それを代表する赤色に対し、特殊な感情を持っている。中国人の心の中で、いいことは常に赤色に連想する。国際的なコンテストに参加する場合、中国の選手は赤いユニフォームを着るのが普通である。黄色は権利を代表する習慣がある。白はは不幸の象徴であると思われる。色彩は人間の心理感覚に対する影響を無視することができず、その視覚的なイメージからいろいろな意味が発生した。日本人は鮮やかな色彩を避け、目立たない色を好むようである。日本人は内的で、静かな性格であるから、「青」のような目立たない色が好きである。日本人「白」は「汚れがない」、「清浄」と考えられ、純潔、純粋、清浄、素朴、神聖などを象徴する。「白」は日本民族の精神構造にあい、象徴に満ちた色である。したがって、日本人は「白」に対し、崇拝に近く、その転義用法もプラス的意味が多いようである。たとえば、「白星」は「勝利」の意味を持つ。
3.2社会文化によって生じた違い
人々の社会生活、文化活動に密接的に関連する色彩語は社会文化の影響を深く受けている同時に、一定の程度でその社会文化を反映している。例えば、中国人はいいことを“红”に連想する習慣があるから、婚姻に関することはいろいろがある。恋の手引きをつとめる女は“红娘”を、縁結びの赤いひもを“红线”という。日本人が「白」に対し、特別な感情を持つから、国会で、記名投票による表決時、賛成の意を表示するのみ用いる票は白色であるから、「白票」という言葉が生まれた。
その他の原因もあると思う。例えば個人の生理や心理的な原因、個人の好みなどによって色彩に対して感覚も異なる。全体的見ると、以上の二つの原因は中日両国の色彩文化の違いに深く影響しているではないかと思う。
おわりに
色彩語は言語記号だけではなく、歴史文化と人間の心理とも深く関わっているものである。東方と西方の交流により、きっと新しい言葉がどんどん出てくるだろう。また、人間は開放意識を持つようになったので、基本色彩語のもとの意味を避け、自由に使う傾向があると思う。
本論文は中日両国の基本色彩語、文化意味及びその違い原因などについて一応研究してみたが、まだ触れていない問題や十分に論述を展開できない点がいくつかあると思う。中日の色彩語は非常に豊富して、しかも深く文化意味があるため、両国の色彩語を正しく使えること、理解することは本当に重要だと思う。これからの中日の交流において、色彩語に対して誤解を招かないように注意しなければならない。
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